10.4 寝ると解法が思いつきやすい

更新日 2021年5月30日


実験:寝ると解法を思いつきやすくなる

ドイツの大学で、18-31歳の66人の協力を得て、こんな実験がされました。

「数字の並びをルールに従って変換する」という課題をこなす中で、より簡単に答えにたどり着ける『規則性』に気付くか?、というものです。

数字の並びの変換に規則性があり、それに気付くと大幅に時間削減できるということです。


結果としては、以下でした。

①導入練習後、8時間起きていて、演習をした人
23%が規則性に気付いた

②導入練習後、8時間寝てから、演習をした人
58%が規則性に気付いた


※なお、①は夜に導入練習をして徹夜をして朝に演習したグループと、朝に導入練習をして昼間起きていて夜に演習したグループがいますが、結果に差はありませんでした


これは寝ることで、規則性(より簡単に答えにたどり着ける方法)に気付きやすくなった、ということを意味しています。




一度チャレンジしてから寝ることに意味がある

寝ると法則に気付きやすくなるといっても、ただ寝るだけでは意味はないようです。

別のパターンとして「③まず寝てから導入練習をして演習をこなす」も検証されましたが、規則性に気付く人は少なかったことが分かりました。



これは「単に寝るだけではダメ」で「一度考える⇒寝る⇒再び取り組む」からこそ、規則性に気付きやすくなることを意味しています。

例えば数学などは、チャレンジしてみて、分からなかったら一度寝て、朝にもう一度考えてみたらいかがでしょうか?



なぜ寝ると、解法が思い浮かびやすくなるのかは、正確なことは分かっていません。

脳の海馬や大脳新皮質の働きが関係しているとも言われていますが、ここでは省略します。

個人的かつ感覚的な話としては以下です。
  • 寝ることで覚えたことが整理される
  • 寝ることで頭から余計な情報がなくなり、脳のメモリに余裕がある状態になる
  • 必要な情報が入っていて、脳のメモリに余裕があるから、大事なポイントに注意を払える


理由はさておき、「できる限りチャレンジして、ダメだったら寝て、翌日もう一度チャレンジする」のがオススメです。



勉強において統計的にベストな睡眠時間は7時間~8時間

みなさんがもう一つ気になるのは「睡眠時間はどのくらいとればいいか?」だと思います。

以下のページで紹介した内容ですが、重要なことなので、もう一度載せます。
<7.2 睡眠時間はどのくらいがベストか?>


ネットだと、1日2~3時間睡眠で鬼のように勉強した人の武勇伝がたくさん出てきますが(笑)、実際に難関大に合格した人はどのくらいの睡眠時間を取っていたのか見てみます。

『睡眠時間』別の『第一志望の合格/不合格』を以下に示します。



合格者で最も多い睡眠時間は6時間~7時間未満でした。

合格率が高かったのは、7時間~8時間未満、8時間~9時間未満でした。



またアメリカのNorth Texas大学が、『睡眠時間』別の『大学の成績』を調査しました。


結果は見ての通り、成績が一番よかったのは7時間睡眠でした。

7時間の睡眠を取ることが重要なのか、または7時間の睡眠を取れるほどに集中して勉強することが重要なのか、はこのデータからは分かりませんが、いずれにせよ7時間は寝た方がいいし、7時間寝れるようなスケジュールでやった方がいい、という示唆にはなります。

ただし、難関大の合格者といえども1日の勉強時間は9時間ほどであることを考えると7時間の睡眠を取ることは無理なく実現できる話と思います。
<7.1 難関大合格者の勉強時間は?>



参考までに『睡眠時間』と『死亡リスク』の関係も研究されているので紹介します。

海外の論文で、152.7万人の分析をして『睡眠時間』と『死亡リスク』の関係が分析されました。


その結果、睡眠時間が7時間の人がもっとも死亡リスクが低いことが分かりました。

さらに、睡眠時間が短いと死亡リスクが上がるのは意外ではないと思うのですが、睡眠時間が8時間を越えると、睡眠時間が長いほど死亡リスクが高いことが分かりました

11時間以上寝る人は、睡眠時間7時間の人よりも1.5倍も死亡リスクが高いことになります。

(これも11時間以上寝ることが悪いのか、11時間以上寝なければならないほど疲れることが悪いのかの因果は分かりませんが)


勉強の観点だけではなく、睡眠の観点でも、睡眠時間は7時間前後がベストであることが分かります。



また最近の研究では、遺伝的に必要な睡眠時間にバラつきがあることが分かっています。

なので7時間より短くても、集中力が続く人はいるかもしれません。

ですが、統計的には7時間前後の睡眠がもっとも合格率が高いし成績もいいし死亡率も低い、という事実を元に、自分が特別ショートスリーパーだと思わない限りは7時間睡眠を心がけてください。




眠いまま勉強していいことは一つもない

睡眠関連でもう一つだけ付け足しさせてください。

よく「1日3時間睡眠で勉強した」とか「深夜まで勉強した」とかが武勇伝のようにtwitterに出回ることがあります。

そんな武勇伝を見て、あせる必要は全くありません。


眠いまま勉強するのは思った以上に非効率です。眠いまま勉強しても一つもよいことはありません。

眠くなったら寝てしまうことをオススメします。15~20分の仮眠をとってから勉強するのもオススメです。


東大京大/旧帝一工/早慶/上智MARCH/関関同立といった難関大に合格する人でも、1日の勉強時間は9時間前後です。

さらに勉強時間が長い人の方が合格しているわけでもありません。
<7.1 難関大に合格する人の勉強時間は?>

1日9時間の勉強と考えれば、7時間半~9時間の睡眠を取るのは充分に可能なはずです。



本コラムのまとめ

  • ドイツの実験で、演習 ⇒ 寝る ⇒ 演習で、より簡単な解法を思いつきやすいことが証明された。
  • ただ寝るだけではダメで、一度チャレンジしてから寝ることに意味がある。
  • 受験の合否、成績、死亡率のデータを見ても、ベストな睡眠時間は7時間。
  • 眠いまま勉強するのは想像以上に効率が悪い。眠かったら寝るに限る。仮眠もオススメ。